2020年7月29日水曜日

個人売買で入手されたHS1を整備する その5 オイルシール


レフトサイド

腰上が乗ってるから、時系列順に書いてないのがバレちゃう。



ジャジャ漏れではないが、オイルシールを交換してリフレッシュしましょう。


泥油汚れを綺麗に洗って


治具を使って


軸基準にオイルシールを挿入します。



オイルシールを外す工具ですが、


フックレンチが意外と使えます。

フックレンチはリングナットの締結に使う工具です。
HS1だと、ステムナットやエグゾーストパイプの締付けにも使います。


コレをこうひっかけて


クイっと♪

てこの原理で楽に外せます。
軸が外れるか、軸との隙間があるオイルシールに限られますが。。


2020年7月28日火曜日

個人売買で入手されたHS1を整備する その4 オイルポンプのOH


エア噛みしてうまくオイルを吐き出せないポンプ

2ストの中古車で初めてエンジンをかけるときは、必ず混合油で始動しましょう。
ポンプが確実に作動しているとは限りません。


外したオイルポンプ


尻栓がバッチリ抜け出てます。


分解して内部調査していきます。


ハイでた!
プランジャーカムがポンプボディから抜けないからってプライヤーで摘まんで抜き取るのはダメっ!!ゼッタイ!!!


しかもオイルシールが斜めになってます。
これではちゃんとオイルを圧送できないはずです。


カム面が心無いプライヤーで痛んでしまっているので、部品取りと交換します。
が、その部品取り(上)は、カムのとても状態が良いのですが、軸が錆びていてよろしくない。


圧入されている軸をプレスで抜き、


合体させて程度良好なプランジャーカムの出来上がりです。


尻栓は一旦抜き取り、接着し直します。


そしてさらに樹脂を流して固めます。
この時、軸後端まで盛り上げておきます。


そうすることで、圧送ダイヤルを固定する割ピンが樹脂のストッパーになるので、尻栓が抜き出て難くなります。


プランジャー側のガイドピンも抜き取り、新品に交換しておきました。

ちなみにプランジャーカム、ガイドピンが摩耗すると、最小ストローク(アイドリング時のオイル吐出量)が減少します。
最悪、アイドリングでは無給油になることもあるので注意が必要です。


ボディはオイルシールはめ合い部分、チェックボール接触面を清掃、修正して、超音波洗浄機で汚れを落とします。


各オイルシール、ガスケット、チェックボールを新品に交換し、テストベンチにて吐出量、チェックバルブの作動状態、各漏れを確認してエンジンに戻します。

これで安心して分離給油が行えるようになります。


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ヤマハ2stオイルポンプのオーバーホールは、ポンプ単品でも可能です。

通常のシール交換のみの作業は、ポンプ単品持込みで 
8,500円(シール代込み、税別)

内部部品に入替えや加工が必要な場合は、別途+αとなります。

※あまりにも程度の酷いものはオーバーホール不可となります。
事前に写真等で確認が必要です。

もしくは
akomotorcycle@gmail.com
までご連絡ください。

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2020年7月27日月曜日

個人売買で入手されたHS1を整備する その3 クラッチの整備


腰上の確認が終わったHS1。
続いてクラッチ周りの確認をしていきます。
で、カバーを外すのですが、


ブレーキアームを留めているEリングが無くなっています。
無くなっているというか、たぶん付けてないんだと思うのです。

アームはこれ以上内側には動かず、ロッドもこれ以上外に出てこないから、Eクリップが入る溝が外に顔を出さないんです。

ロッドを反対側からみると、マイナスネジで固定されていました。
もちろん、後から追加されたマイナスネジです。

ではなぜ固定しているのかですが、
このロッドはブレーキアームの支持の他に、センタースタンドの支持も兼ねており、使用するうちにロッドが通るフレーム側の孔が楕円に摩耗してガタが出てくるんです。
そのガタを無くすためにマイナスネジを打ち込んでロッドを寄せたのでしょう。

フレームの孔を修正するとコストアップなので、ブレーキアームを削りEリングが入るようにしておきました。


さてここから本題。
『クラッチがちゃんと切れずエンストする』とのこと。


クラッチをばらしました。


クラッチプレートはサビが出ており、フリクションプレートと合体していた形跡があります。


そのフリクションプレート。
すっかりカチカチで、摩耗量も限界値を切っておりました。
これは新品交換します。


クラッチバスケット
フリクションプレートと接する部分が段付き摩耗しています。


ヤスリで段付きを修正しました。
ここを削るとフリクションプレートとバスケットの遊びが増え、加減速時に音が出てくるようになるので、ホントは新品にしたいのですが、さすがに入手困難です。
多少の音は耳をつむって頂き、綺麗に作動する方を選択しました。


バスケットを外したら、チェンジシフターの調整もしておきましょう。


チェンジシフターの爪とカムシフトのピンの隙間が左右同じになるのが正解です。

マイナス頭になっているスクリューアジャスティングを回して調整します。
他のネジはユルユルだったのに、このボルトはめっちゃ硬く締まっていました。
折れるんじゃないかとヒヤヒヤでした。

はい、次。


前回の最後に、出てきたギヤオイルが少ないと書きました。


右側のプラグがオイルで湿っていて


右チャンバーから出てくるオイルも多い。
以上から、右クランクシールからギヤオイルを吸い込んでいると推測できます。

右クランクシールは常時オイルに浸っているので、左側に比べると摩耗や劣化は少ないのですが、やっぱり摩耗劣化します。


右クランクシールと接するカラー
オイルシールのリップと接する箇所が摩耗して段付きになっています。
いつも不思議に思うのですが、柔らかいゴムよりも硬い鉄が摩耗するんです。


オイルシールを外して新品に交換します。
その前に、クランク軸にある


この細いOリングも交換します。
これはカラー内径部をシールするOリングになるので、必ず交換しましょう。


オイルシールのはめ合い部はキレイにしておきます。
せっかく新しいシールに交換しても、はめ合い部から吸い込んでは元も子もありません。


そして、オイルシールは必ず軸に対して垂直である必要があります。
治具を使い、クランク軸基準でシールを挿入していきます。


摩耗したカラーは新品に交換します。
まだヤマハから入手できるので助かります。


挿入時にシールのリップを傷めないようカラーの角を面取りしておきました。


これにてクランクシールの交換は完了です。


修正したクラッチバスケットを戻し、新品のフリクションプレートを組み込んで



クラッチスプリングは規定値内だったので、再利用して、
クラッチ周りは完成です。

次は漏れて上手く吐き出せないオイルポンプの修正をしましょう。





2020年7月26日日曜日

個人売買で入手されたHS1を整備する その2 エンジン腰上の様子


HS1のエンジンを診ていきましょう。
さっさと腰上を外しました。
2stなので、楽なもんです。


まずはクランク、コンロッドの周りの確認をしていきましょう。

クランクがダメだとエンジン全バラになり、費用も期間もグンとあがってしまいます。
この車両は摩耗限界値以内で、今回はバラす必要なし。
セーフ!


外したピストン、シリンダー


右気筒のピストンに軽く抱き付いた痕があります。


シリンダーはリングが摺動する部分のクロスハッチが消失し、


ピストンの傷に対応している部分に傷が見られます。
傷自体は重症ではないので、軽く修正とホーニングで対処できそうです。


洗浄した後、ピストンクリアランスを計測して摩耗量の確認します。


計測した結果は以下の通りでした。

ピストンクリアランス
L側:43μm
R側:27μm

新品規定値:25~30μm
摩耗限界値:100μm

R側が新品規定値内に入ってますが、シリンダーの摩耗具合からすると、過去に右ピストンがなんらかのトラブルで交換された可能性が考えられます。

現状をオーナー様に伝え、

L側は、少し大きめの中古ピストンと入替え
R側は、現ピストンの傷修正し
シリンダーをホーニングして、傷の修正とピストンクリアランスを調整
ピストンリングは左右ともに新品に交換

とすることにしました。




抜いたギヤオイルはキレイですが、量がやや少ない。
通常は500~600ccは出てくる。

やはりアレがアレかもしれないと。

次回はクラッチ周りの点検とオイルが少ない原因を探っていきます。