腰上の確認が終わったHS1。
続いてクラッチ周りの確認をしていきます。
で、カバーを外すのですが、
ブレーキアームを留めているEリングが無くなっています。
無くなっているというか、たぶん付けてないんだと思うのです。
アームはこれ以上内側には動かず、ロッドもこれ以上外に出てこないから、Eクリップが入る溝が外に顔を出さないんです。
ロッドを反対側からみると、マイナスネジで固定されていました。
もちろん、後から追加されたマイナスネジです。
ではなぜ固定しているのかですが、
このロッドはブレーキアームの支持の他に、センタースタンドの支持も兼ねており、使用するうちにロッドが通るフレーム側の孔が楕円に摩耗してガタが出てくるんです。
そのガタを無くすためにマイナスネジを打ち込んでロッドを寄せたのでしょう。
フレームの孔を修正するとコストアップなので、ブレーキアームを削りEリングが入るようにしておきました。
さてここから本題。
『クラッチがちゃんと切れずエンストする』とのこと。
クラッチをばらしました。
クラッチプレートはサビが出ており、フリクションプレートと合体していた形跡があります。
そのフリクションプレート。
すっかりカチカチで、摩耗量も限界値を切っておりました。
これは新品交換します。
クラッチバスケット
フリクションプレートと接する部分が段付き摩耗しています。
ヤスリで段付きを修正しました。
ここを削るとフリクションプレートとバスケットの遊びが増え、加減速時に音が出てくるようになるので、ホントは新品にしたいのですが、さすがに入手困難です。
多少の音は耳をつむって頂き、綺麗に作動する方を選択しました。
バスケットを外したら、チェンジシフターの調整もしておきましょう。
チェンジシフターの爪とカムシフトのピンの隙間が左右同じになるのが正解です。
マイナス頭になっているスクリューアジャスティングを回して調整します。
他のネジはユルユルだったのに、このボルトはめっちゃ硬く締まっていました。
折れるんじゃないかとヒヤヒヤでした。
はい、次。
前回の最後に、出てきたギヤオイルが少ないと書きました。
右側のプラグがオイルで湿っていて
右チャンバーから出てくるオイルも多い。
以上から、右クランクシールからギヤオイルを吸い込んでいると推測できます。
右クランクシールは常時オイルに浸っているので、左側に比べると摩耗や劣化は少ないのですが、やっぱり摩耗劣化します。
右クランクシールと接するカラー
オイルシールのリップと接する箇所が摩耗して段付きになっています。
いつも不思議に思うのですが、柔らかいゴムよりも硬い鉄が摩耗するんです。
オイルシールを外して新品に交換します。
その前に、クランク軸にある
この細いOリングも交換します。
これはカラー内径部をシールするOリングになるので、必ず交換しましょう。
オイルシールのはめ合い部はキレイにしておきます。
せっかく新しいシールに交換しても、はめ合い部から吸い込んでは元も子もありません。
そして、オイルシールは必ず軸に対して垂直である必要があります。
治具を使い、クランク軸基準でシールを挿入していきます。
摩耗したカラーは新品に交換します。
まだヤマハから入手できるので助かります。
挿入時にシールのリップを傷めないようカラーの角を面取りしておきました。
これにてクランクシールの交換は完了です。
修正したクラッチバスケットを戻し、新品のフリクションプレートを組み込んで
クラッチスプリングは規定値内だったので、再利用して、
クラッチ周りは完成です。
次は漏れて上手く吐き出せないオイルポンプの修正をしましょう。
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