2022年3月26日土曜日

DT1の整備 その4 クランクシャフトの修正

高回転域で大きな振動が出ていたというDT1。


振動の原因は、フライホイールマグネトーの緩み。
固定しているナットの締付けトルクも落ちていたんですが、


クランク軸テーパー部の腐食が原因で、テーパー嵌合がうまく出来ない状態でした。


その証拠に、キーウッドラフにせん断荷重がかかっていた痕があります。

基本的に、テーパー嵌合は相手部品とのテーパーでの合わせで固定し、
キーウッドラフは位置決めの役割です。
キーで荷重を受けることはしません。


大端サイドベアリングを交換するためにクランクを摘出します。


もう一つの振動の原因が出てきました。
クランクベアリングの内輪の状態に注目してください。
軸が滑って摩耗しています。


取り出したクランクの軸の様子


ベアリング圧入部分が段付き摩耗しています。
これではベアリングを新しくしてもダメです。
クランク軸の肉盛り修正が必要となります。


クランクを分解して、コンロッドを取り出しました。


大端サイドベアリング
左側が段付きに摩耗しています。


クランクピンの様子
そこそこ当りがあるのでNOS品に交換します。



コンロッド大端、小端の状態
大端内径に当りがあるものの、交換するには勿体ないレベルなので続投させます。
ヤマハ純正のコンロッドは、ほんと手に入らなくなってしまいました。
大切に使っていきたい部品の一つです。


外注に出していたクランクの補修が終わって帰ってきました。
ぴかぴーかです。
硬質クロムメッキによる肉盛り補修です。

テーパー部はフライホイールと現物合わせで仕上げてもらい、
ベアリング圧入部の補修とともに、オイルシール摺動部の軸径を調整してもらいました。


軸にスジがあるのがみえますか?(矢印部)

ヤマハ純正では、ベアリング圧入部もオイルシール摺動部も同一径仕上げなので、ここにスジはありません。

なぜこんな事しているかと申しますと、

クランクシャフトはケースのベアリングに圧入しながら引き込みます。


純正のように同一径だと、ベアリング圧入部より外側にあるオイルシール摺動部をベアリング内輪にグリグリさせながら通過することになります。


せっかく綺麗に仕上げた軸をグリグリして傷つけては意味がない!

グリグリしなくて済むように、ベアリング内径よりも細く、かつオイルシールが機能する太さに仕上げてあるんです。


ちょっとした私からのやさしさでございます。



2022年3月20日日曜日

DT1の整備 その3 腰上の確認


点火時期を確認するためにヘッドを外したときに



シリンダー内壁の様子も確認したのですが、
見た目からしてお疲れな感じで、ピストンクリアランスも広がっている感触あり。


シリンダーを抜いて確認しましょう。
スパッ!!と抜ける2ストは楽チンです。

が、どうも違和感ありありなのです。


ピストン吸気側
抱き付きの跡がありますね。


シリンダー内壁(吸気側)
シリンダー下部の当りがかなり強く、クロスハッチは全体的に消失しています。



ピストンは


スタンダードサイズで


排気側


抱き付いた痕のある吸気側
どちらもしっかり使い込んだ感じあり。
その割にはカーボン付着が少ないので、近年に洗浄された感じでしょうか。


ピストン外径:Φ69.948


シリンダー内径(最大):Φ70.154

ピストンクリアランス:0.206mm
なんとまぁ摩耗限界値の2倍。。。


でもって、これがシリンダーを外すときに感じた違和感。
シリンダー下部のピストンクリアランスがほぼゼロで、ピストンが引っかかるんです。

熱の影響か、はたまたシリンダーを落としたのか??

どの時点でこうなったのかはわかりませんが、
このまま使い続けるには全く良くありません。

オーナー様にご報告して、オーバーサイズ加工が決定です。


2022年3月19日土曜日

DT1の整備 その2 古い2スト買ったら見るべきところ

2スト旧車を買ったら(特に某オークションなどの個人売買で)
エンジンかけてみる前にチェックしておきたいところ

前回書いたオイルポンプのチェックはもちろんのこと、


クランクのオイルシールも確認しましょう。
フライホイールとジェネレーターを外せば見えてきます。

DT1でこの形状のオイルシール(ヤマハ純正品)が付いている場合、
前回交換されてから、相当な年月が経っているはず。


ゴムだったリップは石のように固くなり、ゴムよりも硬いはずの鉄のクランクシャフトを削ってしまいます。
2次エアも吸って調子を崩していることでしょう。

無理に走らせようなんてすれば、、、

二次エア吸い込み→空燃比リーン→焼き付き発生 → 腰上全損

修理費用がえらいことになります。


次はエアクリーナーエレメント

朽ちて粉々だったり、

全く入っていなかったり、

テキトーなスポンジでスカスカ or 全く吸えない

街乗りしかしないって人によく軽視されやすいエレメントさんです。



2スト中古車買ったら(買う前でも)チェックしておきたいポイント3点

①オイルポンプ
②クランクシール
③エアクリーナーエレメント

最低でもこの3点は真っ先に点検しましょうね。

壊してから修理するのと、壊れる前に予防修理するのでは、費用も時間も大きく変わります。



2022年3月13日日曜日

DT1の整備 その1 オイルポンプの分解整備

 

エンジン始動後のアイドリングは何とかするが、
ギアを入れて走り出すと2500〜3000回転くらいでガス欠の様な症状で吹けません。
燃料コックから燃料の滲みがあり、オイルポンプからもオイルの滲みがあります。

という整備依頼のDT1です。


一旦、乗ってみて症状確認をしようと思いましたが・・・
オイルポンプからのオイル漏れが酷いので、ある程度整備してからにしましょう。


オムツが仕込まれていますが、もう限界超えて滴り落ちてます。


最小クリアランス(アイドリング時のオイル吐出量を決める大事なスキマ)は、0.07mm

ほぼオイル出ていない危険な状態。


ポンプを外しましたが


オイルが漏れるからといって、駆動軸部分に液体ガスケットを塗るのはやめましょう。
はみ出たガスケットが詰まったりしたら一大事です。


おやおや、、オイル吐出口にあるチェックバルブのスプリングが入っていないです。


ボールはありましたが。

このチェックバルブの機能は、ポンプからのオイル吐出圧力を安定させる機能のほかに、
エンジン停止時にオイルタンク内のオイルがエンジンに流れ落ちないコックの役割があります。

その機能が働いていないと↓↓↓


1次圧縮室にオイルが落ちて溜まります。
そりゃもうモクモクでございます。

では、本体を分解していきましょう。


ポンプボディのガスケット

少なくとも10年以上前の仕様の黒ガスケットが、張り付きもなく取れました。
極最近に分解されたと思われます。

チェックバルブのスプリングが入っていなかったこともあり、怪しさ満点です。


ダイヤル側のオイルシールを外すと


シールの嵌合部は腐食があります。
このまま新しいシールに交換しても、腐食で隙間ができて滲んできたりします。
ある程度、綺麗にしてから組み直しましょう。


こっちはボディ内部のオイルシールですが、
ゴムがカチカチのスポスポでした。
明らかに交換していない様子。
これじゃ漏れますよね。


デストリビューターの軸部分
おそらく錆がでていたのをペーパーで磨いたんでしょう。
ガサガサに傷が入っていました。


そのディストリビューターが回転することによって、プランジャがピストン運動し、オイルを吐出します。


これはプランジャーのピン。
このピンがディストリビューターと接触している箇所で、徐々に摩耗します。


現時点での摩耗具合はひどくないですが、このタイミングで新品に入替えておきましょう。


各部修正したあとは、超音波風呂でキレイにして


入ってなかったスプリングももちろん組込み、


テスト治具で吐出量、リークチェックを行ってから車両に戻します。

上記の作業を簡単にまとめた動画を張っておきますね。

参考にどうぞー。










2022年3月9日水曜日

BOBLレーサー用エンジン MJ2とYF1


ウニ?


いえ、ヤマハの


MJ2


こっちはYF1


どちらもBOBLレーサー用のロータリーバルブエンジン
仕様変更と整備をさせていただきました!

がんばれ!数少ないヤマハ勢!!

ちなみにBOBLとは・・・
Battle Of Bottom Linkの略で、1964年迄に生産された、ボトムリンク式サスペンションを備えたモーターサイクルのみが参加出来るロードレースイベント